« 2014年5月 | トップページ | 2014年12月 »

2014年6月

2014年6月19日 (木)

毎日新聞 記事紹介

<薬害エイズ患者>進む高齢化 「1人暮らし」に不安

毎日新聞 619()731分配信

薬害エイズ被害者の今後の暮らしを考えるプロジェクト発足に向けた打ち合わせをする大平さん(中央)ら=東京都新宿区で2014年6月18日、武市公孝撮影

 1980~90年代に社会問題化した薬害エイズの被害者の中心が30~50代になり、新たな生活不安に直面している。親世代が高齢化し、介助の担い手が減っているからだ。家族が支えられず、被害者が病状を悪化させ死亡する深刻なケースも起きている。エイズウイルス(HIV)感染を抱えた難病患者が長期療養できる施設はほとんどないため、被害者たちは自前の施設運営を模索し始めた。【清水健二】

 血友病患者らがHIVに汚染された血液製剤を投与された薬害エイズは、1400人以上が被害に遭い、既に約半数が命を落とした。90年代半ばに効果的な服薬法が開発され、「死の病」ではなくなったが、血友病も含めた治療やケアは一生続き、就職や結婚をしていない人も多い。

 今年1月、青森県内で70代の母親と暮らす男性被害者(47)が、肺炎で死亡した。5年ほど前、一家を支えていた父が先立ち、間もなく男性の脚に血友病による血腫ができた。化膿(かのう)して約3年前から寝たきりになったが、通院したくても高齢の母は車を運転できない。収入は被害者に支払われる月約3万~5万円の健康管理費と年金だけで、家賃の支払いすら滞った。週6日の訪問看護と週1回の往診のほかは、母一人に介助を頼っていた。

 昨年夏、被害者らで作る社会福祉法人「はばたき福祉事業団」のスタッフらが自宅を訪ねると、男性は痛み止めの薬で意識がもうろうとしながら「何とかして」と訴えた。市役所は世帯を分離すれば生活保護を受けられると説明したが、母は「この子は自分がみとる」と譲らなかった。

 「血友病は主に遺伝で発症する。生活はとても厳しかったが、母親は責任を感じて背負い込む覚悟だったのかも」とスタッフは振り返る。仙台市にあるエイズ治療の拠点病院や厚生労働省にスタッフが掛け合い、地元の主治医を交えて今後の方針を協議すると決まった直後、男性は自宅で息を引き取った。

  同事業団が今年2月、390人に将来の住居や介護について聞く初のアンケートを実施(回答率24%)したところ、41%が単身か親と同居で、86%が「いつか1人暮らしになる」と予想していた。「将来は介護施設に入居したい」と考える人は80%に上った。

 だが、HIV感染と血友病を併せ持つ患者に対応できる介護施設は少ない。国立国際医療研究センターのエイズ治療・研究開発センター(ACC)で患者支援に当たる大金(おおがね)美和看護師は「薬害エイズ被害者の多くは『長生きできない』と考え将来設計を立ててこなかった。長期療養に備えた国の対策もない。年齢を重ねても安心して暮らせる環境作りが必要だ」と指摘する。

 同事業団は今秋、厚労省の担当者も交え、被害者の今後の暮らしを考えるプロジェクトを発足させる。受け入れ可能な施設を増やすほか、家族の介助が困難な時に被害者が必要な医療を受けられる施設の開設を検討するという。被害者の一人で事業団理事長の大平勝美さん(65)は「ACCと連携し、5年後を目標に実現させたい」と話す。

 【ことば】薬害エイズ

 血友病は血が固まる因子の不足で内出血などを繰り返す病気。治療に使われた血液製剤の汚染により、国内患者約5000人のうち若年層を中心に1400人以上がエイズウイルスに感染した。被害者が国と製薬会社に損害賠償を求めた訴訟は、被告側が責任を認め和解金を払うことで1996年に合意。また厚生官僚、医師、製薬会社トップの計5人が業務上過失致死罪で起訴、公判中に病死した2人を除く3人全員の有罪が確定した。

« 2014年5月 | トップページ | 2014年12月 »

2015年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30